>ロータスさんへ
また、ずいぶんと極端な考えの方がいらっしゃるものですね。まあ、そうは言っても朱鷺では、それをやったということになりますが。
DNAの保護というのは、私はあまり重視してはおりません。gakuさんのこのブログの他の話のところでも書きましたが、固有の遺伝子を珍重してもしかたないように考えています。
2009年の岐阜大の発表によれば、2000~2006年に岐阜県内で捕獲されたツキノワグマ32頭中の9割がクマフィラリアに感染していて、クマ回虫には4割強が感染していたそうです。そして、ヘパトゾーンにはその後捕獲されたクマも含めて35頭全頭に感染していたそうです。
限られた地域だけでの生息や繁殖を想定していけば、これは起こり得る帰結としてあらかじめ考えられることと言えます。
遺伝子だけを珍重するのであれば、動物園で飼育するよりは、すでに存在している「冷凍動物園」に生殖細胞を保管する方が、より合理的でしょうし、雷鳥で研究されているキメラ生殖細胞による種の復元の方がさらに現実的と言えるのではないでしょうか。(こちらの手法は、鳥類ゆえに手の届くところまで来ていると言えますが)
野生動物を動物園で飼育することが保護という考えは、むしろ非現実的であって、本末転倒のように私には思えます。野生鳥獣は、自然界の一員として存在しているべきでしょう。
あくまでも、雷鳥やコウノトリ、アホウドリ、ツシマヤマネコ等の「生息区域外保全」の一環というところまでだと思われます。
イギリスにおける「野生動物の保全」という考えの中には、増えすぎた鹿の食資源化もあって、これなどは、我が国の食肉検査制度と大いに異なる点があって、驚かされたりしています。
我が国にも、エゾシカやニホンジカの集団の成長曲線の研究があって、毎年このくらいの頭数を間引いていかないと、集団が崩壊してしまうという数字があるようです。
ツキノワグマにおいても、一定の地域の中には餌の量や繁殖するための営巣場所(冬眠穴)の数が、その地域での生息個体数を左右するわけですから、同じく成長曲線の研究がなされています。
あまりに数が少なく疾病の罹患個体ばかりであれば、そのままでは、誰も知らないうちに消滅しているということにもなりかねませんから、捕獲して健全な血統更新も必要でしょうし、実は増加していたということであれば、クマ同士の闘争による損耗防止や間引くことも考慮していかなくてはならないでしょう。
が、しかし、どちらにせよ元となる基礎データーがないのですから、なにもわかりません。そのためにこそ生息状況調査が必要だと考えるのですが、これを実施するためにクマの世界に飛び込んでいかれる方は、あまりいないようです。
剣山国定公園のクマを研究されている方も、神奈川県出身で高知県に移住された方で、新聞社からの後援があって、なんとかやっていると耳にしています。人がいないと嘆くことはできますが、現実も厳しいですから、やはり容易なことでないのは間違いないようです。